ハナミズキの下で
猫の耳

ハナミズキの花散る夕暮れは、
離れがたく、
別れがたく、
もの寂しく、
思わずあなたの袖を掴む。
「どうしたの?」
迷子の子供に尋ねるような、
あなたの口調に涙ぐみたくなる。
「何でもないの」と首を振る。

いつの間に、こんなに咲いたの?
この間まで、桜が咲き誇っていたのに、
今は、ほんのりハナミズキの下で、
子猫のようにあなたに頬を寄せる。

「明日も会うのに」
あなたは笑う。
「わかってる」と頷く。

風に揺れるハナミズキのせいで、
私はこんなにも臆病になっている。

離れがたく、
別れがたく、
もの寂しく、
思わずあなたの袖を掴む。



散文(批評随筆小説等) ハナミズキの下で Copyright 猫の耳 2015-04-21 21:38:09
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