背中に羽が生えた朝
猫の耳
その朝目覚めると、背中に妙な違和感を覚えた。
嫌な感じじゃない、何だかこそばゆい、くすぐったい、
でも、誰かに背中を優しく撫でられているような、柔らかい陽に包まれているような、そんないい感じ。
うーんと、大きく身体を伸ばして、起き上がる。あれっと思う。身体が軽いよ。
フワッと起き上がれた。
その瞬間、身体が浮いたような感覚がした。
パサパサと音がする。
少し顔を捻じ曲げてみると、
あれれれれ…
背中に羽が生えている。
真っ白な羽がパサパサと、自分の意思で動かせた。
あはははは…
生まれたての羽は、柔らかくて、フワフワで、まんま羽毛って感じだった。
もしかして、私飛べるのかな。
ビックリなんかしてなかった。
いつか、こんな時が来るんじゃないかと、心のどこかで思っていた。期待していた。少しも嫌じゃなかった。嬉しかった。
カーテンを開き、窓を開け、朝日を浴び、思い切り息を吸い込み、羽を動かしてみる。
パサパサ…パサパサパサ。ほら、もう少しで。
サーッと風に巻き込まれるように、身体が持ち上がり、風に乗り、風を切り、私は飛んでいた。飛べた。
青空に向かい、ふわっと羽を広げ、旋回し、スーッと太陽に向かい、そのまま街を越え、山を越え、海へ、海へと。
何だか涙が出てきた。どうしてだか涙が溢れてくる。
嫌だった何もかもが消えてなくなってく。
嫌な人、嫌な言葉、嫌な事、嫌な物、みんな下に広がる海原に捨ててしまえ。
私は空を飛んでいる。
白い羽を広げて、ただ空を飛んでいる。
散文(批評随筆小説等)
背中に羽が生えた朝
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猫の耳
2015-04-19 22:02:40