祖母の春
藤原絵理子


彩色された 醜い些細な日常を
覆い隠すつもりで 目を閉じて見ている
心に残った出来事だけを 何度も何度も
繰り返し話す 自分の世界に浸って


大根の葉が 黄色くなった
裸になった樹の小枝が どことなく
ふっくらと丸くなって 小鳥の羽ばたきに揺れる
薪ストーブと 冬の陽射しが暖める


穏やかな午後を 心地よく過ごした
森の中のカフェでの 笑顔も 語らいも
何事もなかったかのように 忘れ去る


記憶に残る春が 訪れようとする
目を閉じていても 満開の桜は鮮やかに
控えめに 大根の花が そよ風に揺れている


自由詩 祖母の春 Copyright 藤原絵理子 2015-03-04 22:06:55
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