2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと④<2/11〜24>
平瀬たかのり

?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発す
る力があるか、?には保存価値があるかも考慮)
総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。
(7.5点以上は+、−表記はなし)

○非情の罠 5(−)
○パラノーマル・アクティビティ 4(+)
○寝ずの番 7.5
○蜜月 4.5(−)
○ファインド・アウト 6(+)
○夜の大捜査線 8
○ハート・ロッカー 6.5(+)
○太陽の墓場 6.5(+)
○リンダ・リンダ・リンダ 7.5
○愛を乞うひと 7.5
○ナイル殺人事件 6.5(−)
○シティ・スリッカーズ 5.5(+)
○黒い十人の女 4.5(−)
○マスター・アンド・コマンダー 7(−)

 以上14編

○非情の罠
 キューブリックの初期長編作。ラスト、不気味なマネキン置き場での決闘場面はいかにもこの監督らしい作劇。

○パラノーマル・アクティビティ
 実録風ホラーっていうのでしょうかね、こういうのって。低予算にして、記録塗り替えるような動員果たしたそうなのだけど、ボクにはピンとこなかったなあ。確かに今時のムスメさんならこういうのが怖いんでしょうね。でもこれだったら正直昔正午のワイドショーでやってた「あなたの知らない世界」の再現ドラマの方が百倍怖いよ。

○寝ずの番
 中島らも原作、マキノ雅彦(津川雅彦)初監督作品。
 いやぁ、面白かった! もう猥歌のオンパレード! ちんぽ、おめこおかまいなし!
 師匠、兄弟子、師匠の妻が順番に亡くなっていって、その都度弟子たちが通夜の席で、思い出話ししながらとんでもないバカ騒ぎを繰り広げるお話なんですけど、観てるこっちは完全にあの通夜の一員ですよ。通夜なのに楽しくってしかたない。さすが津川さん、「人生の泣き笑い」のツボをしっかり心得ておられるなあと。
 R-15指定になってますけど、子供に見せて聞かせて大笑いさせたらエエんですよ。それでね、「死んだ人間は絶対に生き返らない、残った者はこうやって偲ぶことしかできない」ことを感じさせてあげたらいいんですよ。
 ボクからしたら、死者が生前の姿で蘇ってくる作品のほうがよほどR-15です。死んだ人甦らせるの子供に見せるほうが、あの猥歌の何倍罪深いかわからない。それは映像表現の死に対する冒涜だし、敗北です。どんなに「感動作」と謳っていても基本丹波さんの「大霊界」と同じなんです。
♪ぽっぽっぽー ハトにわとりー にわとりクソこいてケツ拭かんー
  それでもタマゴはおいしいなー

○蜜月
 立松和平原作の自伝的恋愛小説の映画化。
 昔ボクがまだブンガク青年をきどってたころ、現代文学でいちばん読んだのが彼の作品でした。たぶんこれも読んでるはず。
 シナリオも立松さん。うーん、やはり小説とシナリオは似て非なるものなんだなあ。小説では尻切れトンボに終わっても余韻が残るけど、映画じゃ消化不良感が残るだけだもん。
 主人公はまだ「三國の息子」の冠詞が必要だったころの佐藤浩一。青臭くて主人公役にはハマってました。

○ファインド・アウト 
 アマンダ・セイフライドは劇場で「レ・ミゼラブル」観たときから、画面映えする女優だなあと思ってたのですが、本作でそれを再認識。小顔、くりっとした二重の目はどんな役を演じても存在感を際立たせます。
 リベンジのオチもピタッと決まって鑑賞後感もよしのサスペンスです。

○夜の大捜査線
 このクラスの作品に点数をつけるこ自体が間違ってるというか、おこがましいというか……言わずと知れた名画です。
 ずっと悲しみをたたえているシドニー・ポワチエの瞳。ガムをくちゃくちゃ噛み続ける不敵な面魂のロッド・スタイガーに漂う孤独の影……「大捜査線」と言えば「踊る」しか頭に浮ばない若い方々にぜひこの作品を観てもらいたいものだなあ。そして名画、名俳優の風格に触れてもらいたい。

○ハート・ロッカー 
 現代の戦争、戦場の過酷、苛烈さを描いて秀逸。

○太陽の墓場
 大島渚監督作。売血、戸籍売り、愚連隊など、ふた昔前までくらいなら「そういうこともあったのね」的に観ることができたと思うのだけど、なんだかこれがイヤな実感を伴って迫ってくるのはボクだけだろうかはたして。
 しかし伴淳三郎はホントに名役者。ホンマもんの小汚い大阪のオッサンにしか見えなかったもんな。

○リンダ・リンダ・リンダ
 再鑑賞。やっぱり好きだわこれ。最初観たときは最後ちょっと昇華されすぎかなあ、と思ったのだけど、あのコンサートの熱唱がなけりゃそれまでいったい何だったのよ、ということになっちゃうものな。
 80年代後半のバンドブーム、いろんなバンドがいたけど、当時の熱のまま今も残り続けてるのはやっぱりブルーハーツなんだよなあ。
 ペ・ドゥナと香椎由宇の手洗いの場面はとてもいい。ペ・ドゥナの台詞がとてもいいんです。「いろいろあるけど、そうありたいよな」と心から思えるのです。

○愛を乞うひと 
 不満に思うところもあるんですよ。あまりに簡単に台湾行きすぎとか、自分も子供を虐待するんじゃないかという葛藤に触れていないとか、亡夫を全く描いてないとかね。でもそれ差っ引いてもこれは邦画史に大きな爪痕を残す作品。淀川さんが激賞したのも頷けます。
 間違いなく原田美枝子の代表作。鬼気迫る彼女の演技をぜひご覧ください。邦画のみでオールタイムマイベスト50を選ぶとしたら多分残る作品です。

○ナイル殺人事件
 本格ミステリーはトリック分かってもそれをただの「後づけ説明」と感じるか「見事な種明かし」と感じるかで成否が別れると思うのですが、これは後者でした。犯人、トリック分かったので、後日それを踏まえた上でもう一回観てみるつもりです。


○シティ・スリッカーズ
 カウボーイ体験(予想外、予定外の展開大あり)を通してオッサン三人組が「自分」を回復するお話。まあ、面白かったです。過酷な現代社会、地上波で放送したらけっこう視聴率取りそうな気がしますけどね。

○黒い十人の女
 巨匠、市川崑監督作品ということで期待してみたんだけど、正直期待外れ。
 チャンネルのHPには紹介文として「オフビート感覚」って言葉があったのですが、確かにオフだな、オンではない。一言でいうとこの手の作品になくてはならない「スリル、サスペンス、ダイナミズム」がないのですよ。なんとなーく本妻と愛人たちが集まって、なんとなーくわちゃわちゃして男殺す事に決めて、なんとなーくだましたのかだまれたのかいなぁ……って眠たいわっ!!
 まあ、男と女の性や業といったものは描かれてたように思います。


○マスター・アンド・コマンダー
 歴史海洋戦争もの。なかなかに男の子の血を沸騰させる出来栄え。
 最初、突如現れたフランスの新鋭戦艦にイギリス軍艦がボコボコに負けるところからストーリーは始まります。でもって最後にはフランス軍艦負かすと。ベタなんだけど、<敗北、ダメ→努力、葛藤→勝利>という「ロッキーパターン」は外れがないんだよなあ。少年成長物語の側面もあります。
 帆船軍艦の戦闘シーンも大迫力。そしてどこをむいても男、男、男!女性が出て来るのは水上の物売りの場面でチラッとだけ。あとはひたすら男ばっかり(笑)
 作品力で4点つけました。観終わって「あー、面白かった!」とはっきり言える作品です。出て来るのは男ばっかりですが、女性もぜひ。


 今回のゼヒモノは「寝ずの番」「愛を乞うひと」そして「夜の大捜査線」。
ことに「夜の〜」は鑑賞時より余韻力0.5点アップです。いい映画って日をおいていろんな場面がふと思いだされたりするんですよね。クインシー・ジョーンズの音楽もめちゃくちゃいいんですよ。
They call me Mister Tibbs!(ミスター・ティッブスだ!)


散文(批評随筆小説等) 2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと④<2/11〜24> Copyright 平瀬たかのり 2015-02-24 15:27:33
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