2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと③〈1/31〜2/10〉
平瀬たかのり
?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮)
総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。
○ぼくのエリ 200歳の少女 8(−)
○真夜中のカーボーイ 7(−)
○櫻の園 9.5(+)
○サボテン・ブラザーズ 5.5(+)
○櫻の園―さくらのその― 5.5(−)
○シザー・ハンズ 6.5(+)
○アバウト・ア・ボーイ 5.5(+)
○バベル 3.5(−)
○天国の門 6(−)
○清作の妻 8(+)
○ブラック・ダリア 2.5(+)
○ロング・グッドバイ 3(−)
○灼熱の魂 8(−)
以上13編
○ぼくのエリ 200歳の少女
スウェーデン映画。とてもいい作品でした。個人的に「ボーイ・ミーツ・ガール」ものが好きということもあるのですが、気弱な主人公の男の子が出会う少女(?)が人間の血を飲まないと生きていけないヴァンパイア。その設定がすでにこの作品の成功を保証しているといっていいのかもしれません。少年少女に与えられた「枷」はやはりお話を盛り上がるわけですよ。
スプラッターホラー的描写もあるのですが、それが作品上不可欠なものだから違和感もなく、気になることは全くありませんでした。とにかく主人公の男の子とヴァンパイア少女の交流があまりに切なく美しい。
ラスト、あの二人はどこへ行ったろう。どこに住んだろう。見事な余韻を残して物語は終わります。
○真夜中のカーボーイ
冒頭イントロだけで「あ〜、この曲知ってるぅぅ〜っ!」ってたぶん誰もが思うはず。
アメリカン・ニュー・シネマっていうのはこっちのATG映画に似てる気がした。あ、ATG映画がアメリカン・ニュー・シネマを意識したのかな。ダスティン・ホフマンはさすがに上手い。
○櫻の園
今回で三回目の鑑賞。前観た時は録画機器持ってなかったんだよな。ブルーレイでバッチリ録りました。死ぬまでに何回観返すかなこれ。もうそれくらい好きだわ。
マイナスは「舞台本番当日っていうのはさすがにもうちょっとピリピリした雰囲気があるんじゃないのかなあ」というところのみ。けれどそれも大きな瑕疵になっているわけではありません。
観返すことができる作品ってそのたびに新たな発見があるんだよなあ。今回気づいたのは ?カメラワークの素晴らしさ ?つみきみほは声もいい ?ヴァーリア・アーニャ役の二人がかわいすぎる ?あのアイスクリーム俺にもいっしょに食べさせろ
あえて「少女映画」と呼んでみよう。けれどその最高傑作、金字塔ともいうべき本作は四十男に乙女心を呼び起こす力すらもっているわけなんだな。
○サボテン・ブラザーズ
都合良くおバカ。おバカだから都合がよい。さすがジョン・ランディス。まあ「ブルース・ブラザーズ」ほどではなかったけれど。これから落ち込んだときは前出の「ワンダとダイヤと優しい奴ら」と続けて観ようと思ってます。
○櫻の園―さくらのその―
「桜の園」のリメイクというか同監督による「同名作」。
「やりやがったな、やっちゃいけないことやっちまいやがったな」と攻撃的な姿勢で鑑賞したのですが。思っていたほどひどくはありませんでした。思っていたほどはね。一言でいうなら「アイドル使った今どきの女の子映画」ですな。
まぁツッコミどころは多々あるんですがね、「そんないきなり部員集まらへんだろ〜」とか「杏ちゃんは陸上部員でもないのに毎日走り高跳びやってたんか?」とか「福田沙希は閉じ込められて鍵かけられた旧校舎からどうやって出てきたの?」とか。
どのみち負け戦になるんだから、同じ監督で撮るんだったら「犬神家の一族」みたいにキャストだけ換えるような感じの同設定でやってもよかったんじゃないかなあ。たぶんボロボロに負けてるだろうけど、いっそそっちのほうが潔かったかもしれない。
○シザー・ハンズ
ずっと観たかったんだよなあ。期待通りに満足。「ぼくのエリ〜」でも思ったのだけど、異界の住人と人間の恋物語っていうのは鉄板ネタだなあと。
○アバウト・ア・ボーイ
「マン・ミーツ・ボーイ」もの。クライマックスのコンサート場面は気弱な少年一人でラップ歌ってほしかった。大人の助け船に頼るんじゃなくて。
○バベル
やりたいことは分かるんだけどさぁ……さすがに観る者置き去りにしすぎだろう、これ。一丁の銃がひき起こす悲劇を三つのお話として多角重層的に描いてるわけなんだけど、再鑑賞されることを前提に作られてる気がするのねこういう作品観ると。パズル的な映画はあってもいいけど、パズルそのものじゃないんだから映画は。あまり策を弄すると観る側は辟易しちゃうわけですよ。
○天国の門
膨大な制作費とあまりの不入りにより老舗の映画製作会社をぶっつぶすことになったハリウッド史上最大の呪われた作品。その逸話だけ知っていて覚悟しつつ楽しみにして観ました。
確かにしんどいわ、これ。もっとコンパクトにアメリカの暗部「ジョンソン郡戦争」を描くこともできただろうに、無駄がありすぎ。それに始め三十分くらいの華やかな大学卒業式場面からいきなり二十年後に飛ぶっていうのも「待て待て待て〜い!」です。
ただ大作なりの鑑賞価値はあると思います。でも二回目観るかというと「ごめんなさい、こらえてください」なのです。
○清作の妻
自身不勉強でこうして映画ちょっと気合い入れて観るまでその名を知らなかったし、その作品は「曽根崎心中」「黒の超特急」始め数本しか観ていないのですが、増村保造というのは凄い映画監督、映像作家だとつくづく思った。人間の業を見つめる視線は低く、かつどこまでも深い。新進の監督にしてプロデューサー、かつ女優もこなす杉野希妃嬢が好きな監督として彼の名を挙げているのは何とも嬉しく頼もしい。
夫の出征を回避するために妻がとった究極の方法とは…! そして二人は生きて行く。周囲の蔑みの中で。今日も畑を耕して。
○ブラック・ダリア
名作「キャリー」のブライアン・デ・パルマ監督のサスペンスものということで期待して観たのですが……退屈!! 登場人物多すぎ! 話しややこしすぎ!
ミステリーなのに犯人分かっても爽快感1ミリもなし! さすがの巨匠もヤキが回ったのかなあ。
○ロング・グッドバイ
若いころ大藪春彦とか大沢在昌とかのハードボイルド小説に耽溺したことがありまして。でもそれも本格的にというわけでなく、海外作品に挑む前に熱が冷めてしまったのですが。だからこそレイモンド・チャンドラーの傑作といわれる作品を映画化した本作を楽しみにして観たのですが。
残念ながらツボには来ず。これも「ブラック・ダリア」同様犯人分かっても「あぁ、そう」な感じでした。
シナリオが平板だったなあ。ハードボイルドというのは「文体」に依るところが大きいから、お話の中にその原作の文体をちゃんととりこめないと、(とりこんでいるように思わせてくれないと)こういう結果になってしまうような気がするなあ。
○灼熱の魂
カナダとフランスの合作映画。母の死、その遺言をきっかけに双子の姉弟が彼女の人生を辿り、探っていく旅に出るという作品なのですが、素晴らしい作品でした。
大きな場面転換ごとに章名が画面に赤文字で大きく表示される手法も、観てる者をないがしろにしていなくてとてもよかった。
次第に明かされていく母の過酷にして苛烈すぎる人生、そして衝撃の事実。途中でその事実は「たぶんそうだろうな……」と思って観ていくのですが、姉弟が知る(鑑賞者にもはっきり明かされる)場面の絶望たるや……
重く、深く、強い作品です。そして面白い作品です。ぜひもの。
「桜の園」の素晴らしさを改めて痛感。
そして今回は「ぼくのエリ 200歳の少女」と「灼熱の魂」ですね。この深く重い余韻こそ現在の邦画にも求めたい。
散文(批評随筆小説等)
2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと③〈1/31〜2/10〉
Copyright
平瀬たかのり
2015-02-11 20:29:29