2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑤〈2/24〜3/9〉
平瀬たかのり
?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮)
総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。
(7.5点以上は+、−表記はなし)
○狂った果実 6(−)
○大空港 5.5(+)
○ミスト 5(+)
○帰郷 8
○嵐が丘(前・後) 5.5(+)
○屋根の上のバイオリン弾き 6(+)
○がんばっていきまっしょい 7(+)
○蝿の王 5(+)
○フィラデルフィア 7.5
○がんばれ!ベアーズ 8
○悪人 8
○大人は判ってくれない 8
○WATARIDORI 7(+)
○ひまわり 8
○シャンハイ 3(−)
○ジャガー・ノート 6(−)
○無法松の一生 5.5(+)
○ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 6.5(+)
以上18編
○狂った果実
中平康監督の作品なら、同じ無軌道な青春を描いたものとしては加賀まり子の「月曜日のユカ」の方が好きだなあ。しかし津川雅彦の若い時ってのは彫刻刀で彫ったみたいな顔だ。
○大空港
パニック群像劇としてよくできているとは思うのだけど、いかんせん飛行機飛ぶまでが長い。それにあんな大きな穴開いてちゃんと戻ってこれるっていうのは、リアリティーの点で疑問が残るわけで。
○ミスト
バッドエンドっていう知識だけはあったんだけど、確かに・・・。まあ後味悪い悪い。「これも映画かなあ」と思うし、密室パニックものとしてよくできていたので目くじらたてることもないのだけど、ただ怒髪天を衝く人がいるであろうことも容易に想像がつく後味悪さであった。
○帰郷
言うなればベトナム帰還兵と人妻(二人はハイスクールの同級生でもある)の不倫物語なのですが、それぞれを演じるジョン・ヴォイドとジェーン・フォンダが実にいい。こういう作品観ると、戦争の悲惨さ、後々まで個人に残る悲劇や苦しみを映画こそ描いていかなければならないと強く思う。
ビートルズ、ローリングストーンズ、サイモンとガーファンクル、ジミー・ヘンドリックスなどの名曲も惜しみなく使われ、それが作品によく合っていて効果的なのであった。
○嵐が丘(前・後)
おそらくテレビ映画として公開されたもの。メロドラマの原点、世界文学史上に残るヒール、ヒースクリフの哀しき悪漢ぶりをそこそこ楽しめました。
「嵐が丘」は作品読んだことあるのですが、血縁関係がゴチャゴチャしてて、「誰が誰の息子でムスメだったかなあ」と本編と相関図何度もいったりきたりした覚えがありまして、実は今回もそんな感じでした。
○屋根の上のバイオリン弾き
素晴らしいミュージカル映画だとは思うのだけど、これはやっぱり舞台劇で観てナンボの作品なのではなかろうか。「レ・ミゼラブル」にそれは感じなかったんだけど。まあ両方とも舞台作品観てなくて言うのはダメなのだけど。
○がんばっていきまっしょい
二回目の鑑賞。堂々と女子スポ根もの。意外と後述のベアーズと似てたりもする。田中麗奈が初々しい。
親がきちんと描かれてるのがよい。こういう未成年ものはやはり彼、彼女らが「親の庇護下にあること」をちゃんと押さえないとリアリティーが出ず、クソ生意気な妖精どもが戯れてるだけの映画になってしまうのだ。(そうなってるのが「桐島、部活やめるってよ」)
ちなみにクリーニング店を経営する主人公の父親は、白竜。しぶい。渋すぎる。ものすごくいいアクセントになってるんだな、白竜とうちゃんが。
○蝿の王
十五ならぬ二十四少年漂流記。ただこちらの方は、彼らの姿を借りて極限下における人間の本質をあぶり出していきます。
原作どおりなのかもしれないけれど、こちらも人物十五人くらいにして、もっと群像劇みたいにしたほうが、より強く伝わるものがあったかもしれないと思った。
○フィラデルフィア
全面に押し出してるわけではないのだけど、無償の家族愛に涙するならこの作品だなあ。トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンの共演観れるなんて、やっぱり贅沢なことだと思うのですよ。裁判劇としても一級品です。
○がんばれ!ベアーズ
ここまで最後の決勝戦に比重置いた作りになってるとは思わなかった。でもその描き方が濃やかで、ちょっとドキュメンタリーみたいに感じられるところもあったくらい。助っ人二人入ってチームが一気に強くなるのは、映画的演出として許容範囲です。(うち一人はテイタム・オニール演じる少女剛腕ピッチャー)まあそれも少年野球における投手の比重はすごく重いのでリアリティー無視というわけではけしてない。
こういうポンコツ集団が頑張って最後には本当の勝利を掴む、その中に笑いも涙も散りばめられていて…というストーリーはありきたりかもしれないけど、やっぱりすごく好きだ。ボクとしての映画の保守本流はこういうお話です。
○悪人
満島ひかりは張り上げた声が少し掠れる。あの掠れ声が実にいい。あれはどの女優さんも持っていない必殺の武器だ。
宮崎美子の「オカン感」も抜群の安定感。安定しすぎて逆に違和感感じるくらい(笑)。
演技上手をそろえてしみじみとよかった近年の邦画でした。
○大人は判ってくれない
公開当時、この映画のラストのストップモーションを観た日本の批評家の大部分が主人公自殺の決意を読み取った(監督のトリュフォーは否定)そうなのですが、なんでやねん!今も昔も批評家アホばっかりか!ボクは希望をみましたよ、あのラストに。ていうか希望だろあのラストは。
昔の映画とか、モノクロとかいうことで敬遠せず、若い方にぜひ観てほしい作品だなあ。特に詩を書かれる若い方などには。
○WATARIDORI
見事な映像美。どうやって撮ったんだろうという渡り鳥たちの飛翔、生態の数々。大画面で鑑賞できた人が羨ましいなあ、これ。
○ひまわり
ソフィア・ローレンって美人女優というよりも個性派だな、ボクの中では。
戦争が引き裂く恋を描いたものとしては「シェルブールの雨傘」に軍配を上げますが、こちらも名作であることにかわりなし。
○シャンハイ
ストーリーがイマイチ伝わってこなかったことだけでも致命的なんだけど、それより何より「画面が暗い」。だんだんだんだん眠たくなってしかたなかった。
1941年当時の上海租界が舞台なのですが、すごく扱いが難しいと思うんですよ。それぞれの立場によって歴史認識が今でも異なってるところも多々あるわけだから。「戦争渦中」を描くのってホント難しいと思う。
○ジャガー・ノート
海洋パニックもの。あまり知られてないけど十分に楽しめる作品があったりするから、70年代の洋画は油断ならない。B級作品といっていいかもしれないけど、戦争の影がしっかり描かれているのですよねえ。
○無法松の一生
1943年のオリジナル版。
正直ここまで時代遡った作品になると、鑑賞眼が追いついていかないという問題が出て来る。確かに初めて観るバンツマの演技は迫力あったし、最後の太鼓の乱れ打ちは圧巻だったけど、ストーリーとしてはどうなんだろう。なんかはしょり過ぎみたいな気もしたし、正直もっと泣かせる人情ものだと思ってたのだけど・・・。
鑑賞したことに価値がある、そういう作品かもしれないですね、今のボクにとっては。
○ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
石油を掘り当てることに一生を賭けた男の一代記。
火災を起こす油井の迫力は圧巻の一言。
そしてこの作品で特筆すべきは主人公の大山師を演じたダニエル・デイ・ルイスの名演技。さすがにオスカー三度受賞した唯一の俳優。ストーリーを俳優が食ってしまった作品といえるかも。
今回のゼヒモノはやはり「がんばれ!ベアーズ」ですね。
「監督、この試合は勝ちたいからぼくを出さないでほしいんだ…」
「…おまえはベンチを温めるために生まれてきたのか?」
「……(首をふる)」
「よし、さっさと行ってベストを尽くしてこい!」
バターメイカーはロッキーに匹敵する負けるもんかキャラだ!
散文(批評随筆小説等)
2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑤〈2/24〜3/9〉
Copyright
平瀬たかのり
2015-03-10 21:14:59