サ高住
藤原絵理子


過去への扉を閉めて 歩み去った
思い出を 燃やしている その日までの
カレンダアに 印を付けるように
胸をつつく 夢の欠片を夜の河原に捨てる


葉を落とした 桜の小枝が 空に描く
その不規則な網目を通って 降りそそぐ
雪雲の切れ間に霞んだ 冷たく乾いた太陽
もう 何も残されてはいないのだから


ただ明るいだけの 下品な連中と
仲良く談笑なんて真っ平だと 心の奥底で
思っている 夢の中で泣いて 目が覚める


恨み言は 早逝した夫の位牌に向かう
生きていたら もっと苦労だったかもしれないのに
美しい思い出だけが 煙になって薄らぐ


自由詩 サ高住 Copyright 藤原絵理子 2015-01-29 23:07:51
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