「おくる」
小夜

しあわせになるんだと
そればかりおもっている
しあわせになるんだと

月並みにいえば
出会うのだから
別れも来るだろう
行き過ぎてしまえば
傷付け合う日もくるだろう
そのうち傷のことしか考えられなくなって
なにげなく笑えた瞬間の記憶も
塗りつぶすようになって
戻れない方へ
進む日もくるだろう

でも
しあわせになるんだと
おもっている
出会うのも
別れるのも
それぞれみな
しあわせになるため


笑いあうことも
手をとることも
目を見て話すことも
できなくなったとしても
生きてどこかで
笑っていてくれると思えたら
それほどしあわせなことはないのだから

出会った人の分だけ
幸せになるべきものが増えていく
それがどれだけ増えても
幸せにかぎりはない

だからわたしはいつも
てのひらをひらいていよう
いとしい人の手をとるときも
しあわせの方へと見送るための
隙間を残しておこう

ありがとうって
目いっぱい
この腕を伸ばすから
それから拍手を
手がちぎれるくらいの拍手を
贈ろうとおもう

しあわせになるんだと
そればかり思っている

つまりは
ありがとう
しかないってこと

その先に見える景色は
かならず
きれいなはずだ

いただいた景色と
同じくらい
うつくしいはずだ


いつか
見えなくなる
見えなくなってからも
しあわせを信じられるように

出会うのも
別れるのも
みんな
しあわせへのみちすじ

ぜんぶ
正しい
みちすじ


自由詩 「おくる」 Copyright 小夜 2015-01-03 01:37:46
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