肉食動物
藤原絵理子


狸の死骸を突いている鴉は
国道の真ん中で ダンプに踏み潰される
黒い羽は飛び散って
自分も狸と同じように 一塊の肉になる.


通り過ぎる助手席の婦人は 眼を背ける
汚らしい物を見てしまったように 顔を顰める
夜には 行きつけのレストランで
血の滴るステーキを 食べる


ビールを飲まされて 肥え太った牛は
トラックの荷台に引かれる時 淋しい目をする
死んだ狸の目も 驚きに淋しさが混ざっている


もう一羽の鴉が 性懲りもなく
肉を突きにやって来る 仲間の肉も
ベンツの助手席で婦人は 赤ワインの品定めをする


自由詩 肉食動物 Copyright 藤原絵理子 2014-12-12 22:23:26
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