白菜白書
そらの珊瑚

丸ごとの白菜は
野菜というよりは
赤子のような
生きている重量があって
大切な預かり物のように
抱きかかえれば
ここは冬の入り口

ひと皮むくごとに葉は
正しく小さくなる
まるで
時間を巻き戻すような
まな板の上で
執り行われる作業のなかで
白菜に自分を投影したりして

寄せ鍋に入れ
すき焼きに入れ
八宝菜にして
即席漬け
主人公になることはないものの
役をもらえれば
なんでだって挑戦します
みたいな白菜

最後に
愛らしい蕾になったものを
解体すれば
わたしの小指ほどの
ひとひらの真実にたどりつく
生のまま
食せば
苦い芯であった



自由詩 白菜白書 Copyright そらの珊瑚 2014-12-04 09:47:56
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