迷い
藤原絵理子


ぽたり ぽたり
胸の上に 滴る 暖かい
天井裏に隠した おまえの死体から滲み出る血
硝子の破片で刺した 傷口から


あの時 息の根を止めたつもりだった
どこかに潜んでいた 自己憐憫が
止めを刺すことを 無意識に躊躇させた
それは あたしの煩悩だったのかも知れない


あたしの掌には 真っ直ぐな傷跡
遠い思い出 硝子を握り締めた時に
夢と憧憬が あたしを喜ばせ苦しめる 阿片のように


夜が明けて 時間のコンテクストの中で
硬直して開いた口のまま 死んでいる
憐れな魂は その唇に触れている 蝶のように


自由詩 迷い Copyright 藤原絵理子 2014-10-21 22:43:05
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