きみのすべてよ応答せよ
木屋 亞万

走るスニーカーの音、砂利がこすれる、膨張収縮膨張収縮くりかえす肺、夜の街
走り抜ける車道、電灯を避ける影、目がくらむハイビーム
からから充血する目から、ずんとひりつく鼻の奥から、発信されるメッセージ
胸が締め上げられる、心臓がはずむ、足がしびれて、頭から噴き出た汗が、額に垂れて、目に染みる
このまま走る、きみは今だれといる、このからだは、きみのそばにいることを、ゆるされていない
かんがえても、かんがえても、ねがいはとどかない
つかれて、つかれはてて、なにもかんがえず、ねむれるようになるまで
きみのことをかんがえないように、はしる、走る、きみのすべてをわすれるために
きみの目も、わらった顔も、くびもさこつもうなじもてくびもゆびも、
ねえねえとよぶ声も、とんとんと呼ばれたときの肩の感触も、腕と腕が触れていたことも
きみとのすべてをわすれるために
信号が赤になっても止まってはいけない、立ち止まったら考えてしまう
きみの話し方を、語尾の癖を、笑い方を、照れた目を
きみはいま何を考えているかなんて、考えてはいけない
頭に流れるこのことばをきみにつたえたら、どうなるかなんて考えてはいけない
きみのすべてに、からだの核が呼びかける、こころはそれをゆるさない
応答せよ、応答せよ、たすけて、だれか、さみしい、きみは?
はしる、走る、つかれて眠るそのときまで、歩けなくなるまで走る
走り続けて死ねたらきみは
かけつけてくれるかな
かんがえてはいけない
かんがえない
応答せよ
おう桃
嘔吐
おうt
ぉぅ



自由詩 きみのすべてよ応答せよ Copyright 木屋 亞万 2014-10-18 09:41:54
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