夜道で猫に会う
Lucy

荒んだ気分に吹かれているのも
快速電車の乗り心地です
時に青白い猫が追い越して行くのも新鮮
手放しで夜道を直進するも悪くない
見通しは甘くありません
集会に行くのだとばかり思っていたら
対岸の私に見向きもせず
やおら歩道に腰をおろし
バレリーナのようなポーズで
優雅に顎を掻いている
私はみーちゃんと呼びたくなります
どんな猫も
その夜初対面のみーちゃんは
白地に黒のほっかぶり
けして美人とは言えないけれど
結構な時間
私と並んで歩いたのです
ひっきりなしに光が交差する川を挟んで
みーちゃん
と声に出して呼ぶと
おととし死んだ猫が
瞬時に膨張し夜空を覆う
柄はヨモギで
出身は野良
うちのみーちゃんは老衰でした
その夜痩せこけてついにお水も飲めなくなった彼女は
身ずまいを正して
いつも入ってくる私の布団に入ろうとはせず
枕元にまんまるく寝ていた
とても静かで
気品がありました
夜に何度も目を覚まし
みーちゃんのお腹がゆっくりとほんの少し上下するのを
確かめて
また眼を閉じた
朝の4時ころ起きてみたら
みーちゃんは
動かなくなっていた

本当に弱った時
もう誰にも甘えなかった

みーちゃんに見習いたいと思う
荒んだ雲は夜空にちぎれ
あたたかい灯りが漏れる玄関に
私はたどり着いていた







自由詩 夜道で猫に会う Copyright Lucy 2014-09-28 21:00:58
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