平成26年の彼岸花
Giton

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なつかしい匂いは場所が覚えている 線路の隈が匂いたたせるのか
それとも地名がわたしの古いニューロンを刺激するのか
アスファルトの箱庭にされてしまっても場所は記憶を失わない
律儀につながったおもちゃ箱の列が鉄橋を趨り過ぎた
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いつか建設省が川を囲い込んでしまった いまは国土省に改名したんだっけ
かれらは国土をどうしようという気もなかったから 川の流れまで定規やら
雲形定規で整形してしまった それで災害を防いだつもりになった
土建業者に山を崩し放題崩させて水害を誘致しながら川の隈を埋めた
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“除草中”と汚い看板を出している 瓦礫と鉄屑に囲まれた寺は墓商売に余念がない 
むざんに丸刈りされた土手の腹に彼岸花がかたまって生えていた
赤い花は今は消えてしまった無数の生命いのちの墓所 死んだ祖父母の記憶をよみがえらせた
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風が強い 伸び上がってふんぞり返った死火山が吹き降ろす太古の息吹き
あの石は鎌倉時代この石はもっと昔と 水をかけ手を合わせれば
草むらで髑髏が頭をもたげ 幼いぼくらは霊気を深く吸いこんで畦を奔った
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自由詩 平成26年の彼岸花 Copyright Giton 2014-09-13 08:44:10
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