うつわ しずく
木立 悟





蜘蛛の糸の生きものが
紙の壁をのぼりゆく
少しずつ少しずつほどけながら
夜の明るさへと近づいてゆく


歪んだ空の台形が
高みの曇に照らされている
斜面が斜面を
金属のように断つ


巨大な 音の無いシンバルが
曇りへ曇りへ向けられている
動きはすべて
色に還る


かわいた器が夜を埋め
夜の色を変えてゆく
変えてゆく 変えてゆく
変えている


開いては閉じる風のあつまり
螺旋を描き 重なってゆく
重なりは蒼に
蒼は透に


雨のなかから
激しく磨かれた曇が現われ
白と黒の夜を映す
静かな静かな 滴を映す
























自由詩 うつわ しずく Copyright 木立 悟 2014-09-10 13:35:55
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