.…のために
イナエ

ぼくらが産まれたころ
 産めよ増やせよ
政府の方針として人間の出生を奨励した時代があった
早く言えば 粗製濫造

ぼくら乱造された人間はお国のために死ぬこと
それが名誉だと…
他に役に立たない人間であるかのように
死ぬことだけが立派なことだと育てられた

大人になったころに
政府が決めた方針は 
産児制限・優生保護法
平たくいえば 出来損ないの人間はいらないということか

だが ぼくは
生きることは…のために死ぬことだとたたき込まれていた
国のため 会社のため 家族のために 
すべてが 他者のために 目一杯働いて死ぬこと
死ぬために働いてさぼることを知らない人間に育っていた
他国の人にエコノミックアニマルと冷やかされようとも

そして今 
よく働いたから 後は自分で好きに生きろと放り出された

…のためにがなくったぼくら
自分のためになど知らないぼくらは
華麗生きることも 死ぬことも知らず
加齢にとまどいながらも生き続ける

今度は役所が 医療費を知らせてくれる
稼ぎもないくせに医療費こんなにも使っているぞと
医療費補助削減 のために
早く死ねと言っているかのようだ


自由詩 .…のために Copyright イナエ 2014-08-28 18:47:55
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