呼吸する街
itukamitaniji

呼吸する街

道があったはずの場所に
旅人は立ち尽くして途方に暮れた
向こう側にあるはずの未来を
真っ黒な瞳は必死に探す
シャベルが土を掘る音
ヘドロが放つ臭い
崩れ落ちた土嚢
誰もがこの街を
必死に元通りにしようとして
そこにかつてあったような
姿に戻そうとして
この腕は動く
この足は動く
まだ足りない
まだ足りないって
少しでも
この街が抱える悲しみを
分かろうとして
分かろうとして
分かろうとして
分かろうとして
いつの日か
分かろうとして、が
分かった、に繋がると思って
ぬかるんだ道を進む長靴
泥にまみれた軍手
汗にまみれたTシャツ
誰もがこの街を
必死に元通りにしようとして
この街と呼吸を合わせて


自由詩 呼吸する街 Copyright itukamitaniji 2014-08-28 00:17:54
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