ルーシ、5月に生まれた女
ピッピ

ルーシ
君の夢見た世界を
今僕は
半笑いで眺めているよ
ルーシ
僕は一度死んだ
俗世の食べ汚しが
脊椎に溜まったんだ
ルーシ
こうなってはいけない
ルーシ
君の歯並びはガタガタだ
この世を食べ尽くすのに
もってこいの
僕の好きな歯だ
ルーシ
でもルーシ
「君はこの世界に飲み込まれなくてはいけない」
頭に輪っかをつけて
世界を斜め上から見ている場合じゃないのさ
ルーシ
気分が悪いかい
ドとファとソは分かるかい
分かればそれで殴ればいい
いつだってそれで生きていける
ルーシ
Qから始まる単語をいくつ言える
世の中はいつだって
そこから始まっているんだ
ルーシ
君の小さな掌が
僕の人差し指を包み込んだ時
僕にはアルプスとロッキーが同時に見えた
蜉蝣という小さな虫が
5月の世界を作り出したように
あの時
僕は天才になったんだ
ルーシ
君は一人だ
ルーシ
君は一生
自分の中に血が流れているのを
知らなくていい
他人に流れる血を見て
自分が生きていると分かればいい
わかるというのは
いつだってそういうことさ
ルーシ
古びたベッドの上に
眼鏡があったろう
それが僕だ
君には僕なんて
既になんの意味もないものさ
安全靴で踏んづけて
フェスティバルへ行っておいで
君には目に映るものを
全て壊したって構いやしないよ
ルーシ
君の名は
君よりも素敵だ
どうか君が
その名前を決して口に出さぬよう
ルーシ
ルーシ
ああルーシ!
一番明るいあの星に
名前なんていらなかっただろう


自由詩 ルーシ、5月に生まれた女 Copyright ピッピ 2014-08-05 02:18:47
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