我牌はロンである 三篇のオムニバス
るるりら

【九連宝橙】


目を奪われるような荘厳な展開だ
鳳凰の風が 吹いている
いち早く 声をあげるべきか

二度見をするが やはりそうだ
三度三度負けを繰り返してきたが
四方の顔色を一巡する

五月の空は晴れ舞台
六根清浄、我が身に宿る
七歩あるいて唯我独尊といった御釈迦さまの手招きか
八面玲瓏 ささいなことに目くじらをたてることは無い

九分九厘 私が勝利するのだろう 否、  
十中八九  間違いない
九十九折のわが人生の一コマで
面壁九年  薫風に 鳳凰がいま飛び立つ



【緑一色】

望むことと 望まないことを はっきりと持て
ちからなく うなだれることと
やわらかく しなること
                その違いは竹の生き方

空洞を持つなら 淀みを知ることはない
きよらかな考えが
自分にあるとは おもうな
                竹は常に延びる


考え事は あるきながら おこなえ
停滞するな
みしらぬ鳥が 高い場所を知らせてくれる

心の底のもっとも深い場所に
泉が湧き
子鳥たちが たのしく集まるのを静かに待て


【亀虫国士無双】

はてしない逍遥を旅し 巨大な伽藍を発見せり
中には 妻も呼び入れて 奥で仲睦まじくしておった
譜代の者も 体を休めておったのに 我が世の春の儚きこと

伽藍の名は、人間たちによるとエコ給湯器と呼ばれている物だとは
こうして 死して全知の知恵を得るまでは知らなんだ
まさか われらは 人間たちの指先ひとつの命であったとは

われらの国とは 違う論理で生きている人間よ
おまえたちのスイッチ一つでショートし、われらは燃え尽きた
たった 二日ほど風呂に入れなかったぐらいのことで 
ぶつぶつ 文句を云うでない 人間よ

もともと臭い奴らに
臭い目にあっただと
うぬらのような者どもに 言われとうないわ
あの素晴らしく平べったい われらの身体をかえせ。 人間よ





自由詩 我牌はロンである 三篇のオムニバス Copyright るるりら 2014-05-10 14:16:58
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