僕たちは生きているだけで人生については十分論じ合っている
ふるる

指先でぬぐえない
苦しみの跡が
陸にあり

次の世代に期待、と今の老人がいうとき
それは諦めでもある
問題を解決しても次の問題が持ち上がる
償いをしても次の償いを要求される
支配者を排除しても他の支配者が収まる
システムを変えても別のシステムが起動する
万人に都合のよいことなんてあるはずがないから
いつだって不満と欺瞞と傲慢だらけだ

いいところだけ見れば昔はいいし
悪いところだけ見れば昔はとんでもない

折り紙みたいに全ての折り目はつながっていて
つまりあの時のあれがいまにつながっているという論法
つまり誰かが喜べば誰かが悲しむという寸法

指先でぬぐえない
悲しみの跡が
空にあり

人間のせいで、と今の若者がいうとき
それは予言でもある
木を売れば洪水
埋立地は液状化
抗生物質を使えば耐性菌ができ
絶滅危惧種を守れば他の絶滅危惧種を招き
除染をすれば海へ流れる
全てを予測できるなんてことあるはずがないから
いつだって想定外と人災と後悔だらけだ

いいところだけ見れば人間はいいし
悪いところだけ見れば人間はとんでもない

自然の中で暮らすと言ったって
クリーンなエネルギーと言ったって
弱者から搾取するかりそめの平穏に
後世に押し付けるゴミの山

いまだに残る小さなプライドが
上から目線で地球環境をどうにかできると思い込ませる
どう考えても不可能だろうに
かわいそうに

今も昔も暗闇と混沌におびえながら
幼く弱く生きるしかない
つたなくそっと伸ばすしかない

君の頬の悲しみを
ぬぐうために
手を伸ばす






自由詩 僕たちは生きているだけで人生については十分論じ合っている Copyright ふるる 2014-04-03 16:19:41
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