イージス
水町綜助

イージス


あらゆる災厄や障害から
           まもってあげたい
イージス、その姿はかがみのよう

みなも、かけた
わけを聞かれると
うつむいてしまう
斜め上を向いて
窓からの照り返しに
頬を白く飛ばしている
その時と、同じ眼をして
光に透けて、鳶色

ぼくたち ? は
あいしすぎた ?
おたがいとじぶんを
かがみにむかって
いつくしむ
そんな、ふうに ?

だっていつも、笑っていた
おそらく正直に
口を開いたなら
白子がプツリと弾けるように
中身を吐き出してしまいそうだから
ひとまずは18個、パックに詰めて
贈りあってみた

幽霊のようだ
そのように見える
そのように見えて、
ほんとうに幽霊なのかもしれなかった
というよりも、
幽霊だった(笑)

気づかないふり
していました

ただ、あいしていた
しかし、なまえさえも
わすれてしまうのだ、
と口にしていた
すぎさった黄色い光の中にある
ひびは
時間とともにかわいてしまったから
われてしまったのだ

うしなわれた、なまえの
空位
そこをうめるものはなに
くちびるにのる唄か
街が終わってしまった夜に
しんと路上につもる
冷たい空気の中に落ちた
いっぺんの詩か
空位とはどんなかたちなのか
そこにあてはまる正解はなにか
そのりんかくを
ただしくいいあてるものはなんだ

呼ばれなくなった名
残響はいま、街のどこまで行っただろう
街を東西に分かつ線路上で
激しく呼び合ったので
南の海にはもうとどいたろうか
それはもうそのままにして
北の尾根に跳ね返ったものが
耳に届いたなら
おもわず振り返ってしまうだろう

うつくしく映し
跳ね返す
まなこを見る
石になってしまうほど
鳶色のガラス体を
冬の青が
透ける瑞々しさを
凝視する
まもることと
はねかえすこと
かたくとざしたそのどちらも
ぼくらは手にしているが
映すこともまた
使い分けることができる

今日は、金曜日
明日は、土曜日
めったにない休日がやってきて
しずかなあの町に
残響が跳ね返って
かすかに聞こえたなら
振り返ってしまいそうになりながら
空を見てごまかすことにする









自由詩 イージス Copyright 水町綜助 2013-12-13 21:44:48
notebook Home 戻る  過去 未来