鳥でなければ
Lucy

鳥でなければ見たことのないはずの景色を
夢で見た

子どもの頃なら
空を慕った記憶はある

宇宙からの信号は
生まれた日から
届いていたのに
地表に張り付いたまま
私の未来は区切られていた

教会の屋根の上を飛ぶ
鴉の位置も
コスモスの上を舞う蝶の高さも
空なのだ 蟻やコオロギから見れば

そしてミミズから見れば
蟻の居場所も

四つ足の低いおまえの視点から
見上げれば
二足歩行の私の頭も

けれど私が空に居ないように
蠅も雀も空には居ない
木々の梢も
高層マンションの最上階の
あの子の部屋も
空に見えて空ではない

苦渋をにじませ
足を引きずり
あなたが歩いて行った地面が
私の空だった事もある

私は憧れる事をやめた
同時に 自分を卑下することも

鳥でなければ目指さないはずの
夕暮れの稜線を
恋い慕うように熱望し
渾身の力を込め
羽ばたいた

空ではないので
翼が焼けることはない
イカロスのように罰を受け
墜落するということもない

ただ肩甲骨が痛み出し
諦めの誘惑に
心が何度も負けそうになるだけ


自由詩 鳥でなければ Copyright Lucy 2013-12-13 11:11:44
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