白い蕾
Lucy

冬になる前に
庭のバラを剪定した

咲き遅れた蕾の枝を
花瓶に挿しておいた
膨らみかけていた他の蕾は
次々に開くのに
その白薔薇の蕾は
しばらくはじっと蒼いまま

ある時
限界を迎えたようにがくが裂け
首元に反り返ると
躊躇ためらうように
蕾は僅かに膨らんでいた
それは
残りの命を振り絞り
咲こうとしているようにも見えたし
頑なに
咲くまいとして
堪えているようにも見えた

やがて
葉から緑が抜け始め
次々に落ちた
萼の色も枯れ色になり
閉じたままの蕾の外側の花びらも
端から水分を失ってゆく

冬は曖昧な保留の白さで
窓外の景色を埋めてゆく
街路樹の根元に
ヒマワリやコスモスの種を忘れながら

白い蕾は変わらなかった
変わらないという決意のように
執着のように
未練のように
あるいは
思い違いのように

蕾の声に耳を澄ますと
自分の声が聞こえてくる






自由詩 白い蕾 Copyright Lucy 2013-12-09 12:07:47
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