裏表紙
ただのみきや


葉を落とした蔦は陰鬱な妄想
囚われた家も人も沈黙を叫ぶかのよう
十一月は開けっ放しの箪笥
風や霙しか仕舞われていない空の空

冬は心の真中から始まる 
だがものごとの始まりは不明瞭 
球体の頂点のように疼くだけ
気がつけば吐息白く耳はとり残されたまま

世界は静かに塗り替えられる
視力を失くした老人の目の色に
絵描きは耐えかねて記憶のマッチを擦る
破裂した心臓よりも紅く咲いた女

種子や蛹を眠らせて大地は封印される
木々は震えながら魂をさらけ出し
人は羊のように着膨れて年の瀬を駈け下りる
言葉は遠く飛び去り白いページが今は飄々と


       《裏表紙:2013年11月29日》




自由詩 裏表紙 Copyright ただのみきや 2013-11-30 22:32:15
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