booked will
月乃助


忘れ去られた化石のように
 書籍がたちならぶ


黴は 胞子のにおい
 博物館の展示品さながら
 標本とみまがい、


ここでは もう誰も
 紙に書かれた物語を
 手にするものはいない


紙の本たちは、死んでしまったのです


死に絶えた本たちのかたわらに
 フォルマリンの瓶に浸かった 「 知性 」たちも
 ひっそりと
 息をころし


外界では、ただ「 情報 」ばかり際限なく
 圧縮と増幅をくりかえし
 デジタルの 文字の網は、
 するがままに
 網羅をつづけ、


図書館は、無言しじま
 博物館化されるに まかせ
 小声をかわす 
 少女達の 聖域化された修学場でしかない


人は、紙の本のなぐさむる ぬくもりの質感 と
 もたらされる重力に、
 物語の 発する引力らしきもの
 それを欲するものだと ひとり信じていました


進歩はいつも 旧き人間たちをおきざりにする


慈しみに、


かえすがえす


永遠の 眠りのおとずれの時 


この身を、図書館に埋葬していただければ、

 
本のまにまに 物語のそのうちふところを
 わたしは、
 そぞろ歩きしとう
 ございます







自由詩 booked will Copyright 月乃助 2013-11-04 20:54:37
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