ひとつ 指先
木立 悟





小さな虹が
扉をたたいた
革の鋏 半月の窓
銀と白がすれちがう径


蛇の頭に
打ち下ろされる槌
爪のはざまの血
底へ向かう 斜面の途中


渦を吸い込み
渦を吐き出す
廃路をゆく背
遠去かるのに
遠去からぬ背


吹雪のなかの紅の草
ただ子どもの声をして
白の重力に逆らいながら
空つき破る森を見る


おだやかなものほど烈しく拒み
冬は遅れ さらに遅れる
パレットと共に凍る筆
すべてを包むかたちをしている


ひびわれた明るい路
暗がりを暗がりへ曲がる路
空へひたすら
真昼を梳く路


指先の霧
水から起こした半身
枝に眩む
枝に眩む


遅い光を数え 数えて
曲がり角に積もるやわらかな層
かがやき伸びる飴の行方を
皆にこやかに追ってゆく


雨の朝に咲きながら
どこまでも陽を避けるもの
北へ北へ向くまばたき
白と黒の 
重さの無い滴にひらく手のひら


いきどまりの径の
いきどまりを照らす灯
かたくまるい明るさの
その先のその先の暗がりで
指は指の羽を数えつづける






























自由詩 ひとつ 指先 Copyright 木立 悟 2013-09-25 19:42:14
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