浅黒い日中に突き刺さる鈍重な乖離
ホロウ・シカエルボク




筋道は分解されて散乱して幾つかは紛失した、もうそれ以上今までのことに固執していてはならない、死体を愛すると陰茎から壊死してくるぜ、暴発を繰り返すようになったら終わりさ、ところかまわず撃ちまくるようになったらそいつにはもう明日なんかないんだ、熟れ過ぎた実のように零れ落ちて土に還るだけさ、冷たい肉体に指先を伸ばしたりなんか決してするべきじゃない、そんなことをしたって誰もお前のことを愛すべき狂人だなんて思ったりしちゃくれないさ、ほんの少し狂気を滲ませたいなら正直にすればいいのさ、本質の大半は簡単にモラルを飛び越えるものだ、もちろんモラルを理解していなければそれはただの粗相みたいなもんだけどな、放出したものをペインティングナイフで壁に塗りつけろよ、それは必然性というものの象徴的な出来事になるだろう、死ぬために生きているわけじゃないが時々死んでるみたいな気がするときがある、正気に結構な数の銃創のような穴ぼこが空いて、その全てに朦朧が詰め込まれるんだ、なめされた皮のようなのっぺりとした日常なんてそんなに珍しい話じゃない、この世が確信だらけなんて思い上がりもいいところだぜ、常に真っ暗い井戸に顔を突っ込んでいるような人生で無ければ安心して生きることなんか出来ないさ、悟り、信念、主義主張、主観客観直観霊感、そんなものすべて嘘っぱちか欺瞞だ、飲食店の店頭に並べられたプラスティック製の食いもんみたいなもんさ、参考以上のものには決してなりはしないんだ、視覚嗅覚聴覚のもっと奥にあるもの、もっと奥にある思考の心臓のようなものに触れること、そいつを感じなければならないんだ、そいつを感じなければ、きっと食えないもので終わってしまうのさ、暗闇の中に顔を突っ込んでいなければ駄目だぜ、そうでなければ本質なんて目蓋を開くことさえしやしない、表面で処理しているものを奥底まで持って行くのさ、一度切り裂いたものをもっと切り刻むのさ、細かい塵みたいになるまでな、徹底的にやりなよ、徹底的にやるんだぜ、逃げ場所なんか残されちゃいない、覚悟して首を突っ込んだんなら言い訳出来ないくらい徹底的にやらなくちゃ駄目さ、破片が細かくなっていけばいくほど、そこにはたくさんのことが記されていることが判るだろう、手元を誤ったりするなよ、切れた指先から血が流れだしたらそれは儀式になっちまう、浅黒い日中に突き刺さる鈍重な乖離、穴ぼこに埋め込まれた朦朧が卵を産む、そこから生まれてくるのは何だ?それにはまだ名前が付いていない、生まれるべきものなのかどうかも判らない、もしかしたらそれは事故のようなものなのかもしれない、美しいものなのか醜いものなのかも判らない、もしかしたらどちらにも属さないものなのかもしれない、丸っこいのか角ばっているのかも判らない、そんなやつらが無数に生まれてくるんだ、穴ぼこに埋め込まれた朦朧の中からだ、そいつらは何を食って生まれてくるまでに成長したのだろう?もしかしたら穴ぼこが空いたこと自体がそいつらの仕業なのかもしれない、そいつらが繁殖するためのプラントに正気が選ばれたのだ、浅黒い日中に…生まれたものたちが体内のあちこちに散らばるせいでアクセスがはっきりしない、取り残された思考たちがあちこちで餓死する、そいつらの死体は体液や筋肉の作用によって一つ所に集められて捨てられる、汗や小便なんかに混ざって、そうして何も無かったことになる、欠落した思考回路は繋がらない文脈をやたらに生成し始める、統合失調症患者の独り言みたいにさ、滑らかに流れているのに意味を持たないんだ、それは悪い意味でシンプルに出来ているのさ、一度それが始まったらショックが起こるまでは収まらない、ショックを、ショックを定義出来るか?それは瞬間的に作用するエネルギーのことだ、そいつが散らばり欠落した思考を圧縮して再構成するのさ、ベーシックが整いさえすればそれでいい、思考は特別な要因を持たない、スイッチがきちんとオンになればそれで構わないというわけさ、鉛筆を手にとって頭の中を流れていくものを書きつける、記されたものは赤の他人に宛てた遺言のように見える、誰に何を残そうというのだ?なにかをはっきりと認識しようとすると、クエスチョンだけが増えていく、生まれたものたちは全身に散らばり、落ち着く場所を探そうとする、思考回路は回復し、思考は散らばり、生まれてきたものたちを見つけたら喰らいついて飲み込む、霧が晴れるような正解を肉体は求める、思考は、意志は、存在の規定はひとつではない、無秩序に無作法に無遠慮に散らばるそいつらを無理矢理に押さえつけて縛り上げ、ここに曝してみせるプロセスがもしかしたら「詩情」なのかもしれないぜ…。




自由詩 浅黒い日中に突き刺さる鈍重な乖離 Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-09-15 15:11:14
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