誕生賛歌
HAL

きみはなぜ生まれたときに
あれほど大きな泣き声を挙げたのだろうか

この厳しくやさしくない世界を
きみはすでに知っていたからだろうか

それとも笑うことは難しいから
その代わりとして泣き声を挙げたのだろうか

だれもが生まれてきた新しい命を
喜ぶのに 嬉しさを憶えるのに
それをまだきみは知らなかったからだろうか

でもきみもいつか知るんだ
生まれたことにこそ意味があるんだと
生まれたことにこそ価値があるんだと

きみが初めて憶えた言葉は『イタい』だった
きみが初めて立っちしたのは病室の中だった
きみが初めてヨチヨチと歩いたのは病院の廊下だった

そんなきみにお説教では決してないけれど
父さんが多くの失敗から少ない成功から学んだのは
命さえあれば この世の中もなかなか捨てたもんじゃないということだ

だからぼくは司馬遼太郎氏が“風塵抄”に残された
“新とは生命そのもののことである”との半句を借りて
きみに新(あらた)という名を授けたんだ


自由詩 誕生賛歌 Copyright HAL 2013-08-18 01:31:23
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