魂乱刈り(たまらんがり)
ホロウ・シカエルボク



日常に生えふさぼる
魂を刈って過ごした
油断してるとすぐ増える
根ごと抜いてもすぐ生える
恐ろしくしぶとい
恐ろしくしつこい魂
これでいいと思っても
これでいいと思っても
驚くべき繁殖力で
日常の床を隠すうっそうとした魂
刈って刈って刈って刈って
部屋の隅に積み上げても
振り返るとまた同じように生えている
あぁ
俺に何をやらせたいんだ
クタクタなんだ
休ませてくれ
新しいことが進行してくる
欲望という名の戦車に乗って
俺は刈って刈って刈って
あとの処理が追いつかない
燃やすと火事のもとになるし
ほっとくと腐るし
魂の腐敗臭、嗅いだことあるか?あれはそりゃあひどいもんだぜ
俺は刈って刈って刈って
あるときブチ切れ
刈った魂を片っ端から喰ってった
魂は悲鳴を上げ、オーイ
なんてことしやがんた、と抗議の声を上げた
俺は構わず喰い続けた
あたりは魂の血飛沫で汚れ
口の中にはひどい味がした
俺は魂を喰って喰って
魂はアクの強い魚みたいな噛みごたえだった
残り少なくなった魂は両手を合わせてやめてくれと懇願していたが
俺は御構い無しに頭からかぶりついた
ぷひゃっという音がして魂の脳みそが潰れた
朝から晩まで魂魂
寝ても覚めても魂魂
俺はたまには魂の無い世界に行きたかったのだ
魂ばかりの世界は時々堪らないのだ
刈った魂をそうして喰らい尽くしたが
どうやら喰らうのに時間がかかり過ぎた
新しい魂が日常の床を埋め尽くしていた、この野郎
関わるのをやめてひたすら殺してやろうか
酷い毒でも撒いてあの世へ送ってやろうか
だけど俺はまた魂を刈って刈って刈って
今度は積み上げたりしようとせず
形状に従って自然な形に並べてみた
自然な形の魂の集合はなにかしら
例えば暗示のようなものを感じさせたが
漠然とし過ぎていてなんなのかは分からなかった、そして俺はそのことが結構気に入った
おそらくそれは普段から慣れ親しんだ名前で呼ぶことが出来たが
その名で呼ぼうとは思わなかった
得てしてそうしたことはやり過ぎるとつまらなくなるものだ
俺は魂を刈って刈って刈って刈って
並べて並べて並べて並べた
並べられた魂はスマートな女のような色気を持ち
そのことを誇らしく感じていた
それで俺はしばらくの間そのままにしておいてやろうと思って
寝床を用意してクタクタの身体を休めた
クタクタの身体はセクシーな配列の魂を飲み込み
夜の間に俺の肉体と完全なひとつになった
その配列はきっとそのうち
朗読会なんかで良い余興になるだろう



自由詩 魂乱刈り(たまらんがり) Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-07-26 23:20:06
notebook Home 戻る  過去 未来