白いエプロンをした母が
教室に飾ってね、と
頑張っていってらっしゃい、と
庭から切ってきた紫陽花を
新聞紙にくるんで
手渡す
二人だけの儀式
途中
それは嘘のように膨張し
私の腕にぶら下がる
花喰いイグアナに出会ったら
即座に くれてやろうと
企んだものだったが
トカゲではどうしようもない
学校に着く頃には
それは
ひどく
うっとおしいだけのものになった
ランドセルに
給食袋に
白色を失くした絵の具セット
その他
目には映らない
いろいろなものも
小学生だって
かかえているのに
知ってか知らずか
晴れ間には
母は
また いそしそと
輪ゴムでくくった
六月の花束を作ることだろう
私は
すでに号泣も出来ず
花はもういらないとも
ついぞ言えなくて
いってきます、とだけ
言い続けた