足あとⅢ—夢の中で—
りゅうのあくび

朝を告げる
鳥たちは
探してもまだどこにもいない
深い暗がりのなかを
どれぐらい永いのかもわからない
道のりを歩いてゆく

雨でもなく雪でもなく晴でもなく
どこにいるのかもわからずに

ふと
かばんと腕時計の
重さがないことに気付き
遠い夜空のただ中で
星が見えない
雲の外れへと
たたずみながら
さらに歩いてゆくと

雲が少し晴れて
小さな黒い
夜空のうえ
宇宙がかすんで
見える中
月影はおぼろげに
誰かを優しげに見つめるように
横にはすでに
ペールグレーに
染まって化石に
なってしまった
窓枠と本棚と
だけがあって

誰なのかは
わからないデコルテが
磨かれた大理石のように
凛として弧を描いている

恋しい人が
そっとまばたく瞳は
僕を写す鏡のように
現れる

目が覚めて
窓辺は銀色にかがやきながら
しっとりとうるおうように
朝にたどり着く



自由詩 足あとⅢ—夢の中で— Copyright りゅうのあくび 2013-06-12 21:46:15
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