夏の星座の下で
ホロウ・シカエルボク




夏の星座の下で
コカ・コーラとポテトチップス
行き場を
排除した僕らは
廃棄された遊園地で
誰も居ない遊園地で
こんな歌あったなと思いながら
夏の星座の下で
夏の星座の下で


現実はクロスカウンターみたいに
僕たちのアゴをカチ上げて
ふらふらと目を回させる
放課後のフォークダンスのように
校庭でいつも僕たちはよろめいていた
合図を決めて
抜けだすんだ
誰も傷つけることのない
反逆があったって構わない


観覧車は回らないから
よじ登っていった
地上から三つめ
街を見下ろすゴンドラ
肩を寄せ合って
息を整えた
割れた窓から入り込む風は
街のそれよりもずっと綺麗で
眼下に灯る
僕たちの暮らしを見ながら
世界が小さすぎるんだって君は舌打ちをした


パティ・スミスのロックンロールと色褪せたコンバース
それが君の聖域だった
白けたふりを装いつつも
僕は
君のことをとてもうらやましく感じていたんだぜ
強い風が吹いてゴンドラが揺れたけれど
少しも怖くなんかなかった
星空を航海していたんだ
ハートのコンパスが示す行き先に向かって


僕たちは夜明けを待った
埃にまみれて
僕たちは夜明けを待った
べっとりと汗に濡れて
僕たちは夜明けを待った
ハミングをしながら
僕たちは夜明けを待った
明日のない二人のように
やがてサイレンのように朝日が
僕たちの脳を貫いた時
僕たちは両の拳を
突きあげて叫びまくった
何故だか判らないけど
僕たちは叫びまくった
そこには始まりがあり
そこには許しがあり
そこには警告があり
そこには秘密があった
僕たちはそれを見たんだ
観覧車が激しく揺れて
僕たちはよろめいて
肩をぶつけて笑った
愚かといえば愚かであり
イカしてると思えばイカしてた
どちらにも取れるなら
どちらかで悩むことなんかない


僕らは観覧車を下りた
戦場から帰還する兵士のように
魂の熱を感じながら
またすぐに始まる
戦いのことを考えながら
夏の星座の下で
僕たちは戦士だった
夏の星座の下で
夏の星座の下で




自由詩 夏の星座の下で Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-05-23 00:13:40
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