昭和ノート
メチターチェリ

宮沢賢治『春と修羅』「序」より
じじからもらつたわらばんしにきらいなにんげんのなまえをかいた。

「静かにしてくださいよ」という声がして、みんな黙りました。
残念です。結局答えは1つしか用意されていなかったのですね。
最初から、だれが勝つかなんて分かっていたから、喧嘩にさえならなかった。
最初から、だれが勝つかなんて分かっていたのに、喧嘩にさえならなかった。

教室の中で雨が降っています。傘をさしている人は、誰もいません。
今朝テレビではお天気の人が「友達はいません」と告白したから
喜色。ご家庭ではきっとあまい香りがしている。

今朝くつしたを履いたら、急に匂いが嗅ぎたくなったので
行儀が悪いとはおもいつつ、あぐらを組んで、あ、
あぐらをといて、気が変わってしまって歯をみがいてしまった。

今朝どうにも熱っぽいあたまと、からだをぶんだんして
あたまはおかしらに、からだはごしんたいに、それぞれ献上したから今夜はいい夢が見られる。

今朝「実はわれわれはいっせんこうねん前から存在しない光。実はわれわれは誕生以来ばくはつをつづける原子核融合の強い光。実はわれわれはわれわれという方角から来たひとくさりの青い強い光。実はわれわれ『といふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い*1』光。実はわれわれ赤青黄色の3原色です。実はわれわれ。われわれ。ワレワレハ。もうすぐトナーが切れる。インクカートリッジの回収にご協力ください」という夢を見て、怖くなった私は藁半紙に立ち返り、今この手紙を書いている。

もうじき夜が明けようとしている。大地の向こう、水平線から昇った光が世界を照らす。なんと壮大なことだらう。


*1 宮沢賢治『春と修羅』「序」より



自由詩 昭和ノート Copyright メチターチェリ 2013-05-16 01:03:21
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