「憲法を変えて、戦争に行こう」
動坂昇

 日本にいるみんな、どうか、12月の選挙を思い出してほしい。あのとき、ネットでのアンケートなどの傾向と、実際の投票結果は大きく離れていた。これは、ネットを使わないものの人数としては圧倒的に多い年配の世代が投票結果を大きく左右するということなんだ。彼らのうちそう少なくない人々が、変化の早すぎる世を憂えていて、日ごろから若者を叩き直したいと思っていたちょうどそのときに、若者を軍隊に入れて鍛えるべきだという政治家の過激な発言を放映するTVに影響されて、自民や維新に投票したんだ。

 もしも、あなたが、まもなく憲法を変えてあなた自身やあなたの愛する人たちを中国や北朝鮮との戦争に送りこみたい、とは思わないのであれば、どうか、ネットを離れて彼らのひとりひとりと直接たくさん話してほしい。できるだけ丁寧に、できるだけ辛抱強く、できるだけ時間をかけて、近くにいる人々のなかでできるだけ多くの人と。

 身近なひとと政治の話をすることは、タブーだとされてきた。でも、もしもみんなが黙ってしまえば、TVのような年配にも届くメディアでより大きな発言力を持っている政治家だけがもっぱら自分の意見を広めることになるんだ。それは民主主義を損なうことだ。ぼくたちは、話し合いの場を、身近なところに取り戻さなくてはならない。民主主義は、家族や、友だちの会話のなかにあるんだ。政治的発言を恐れなくてもいい。みんながいっせいに恐れれば恐れるほど、政治的発言はひとを傷つけるかもしれない。でもみんなが政治について今日の天気の話題くらいなにげなく話すようになれば、そのときぜったいにひとは傷つかない。なにげなく、身近なひとたちと、話していこうよ。

 さもなければ、憲法を変えて戦争に行くんだ。そのどちらかしかない。


散文(批評随筆小説等) 「憲法を変えて、戦争に行こう」 Copyright 動坂昇 2013-05-06 09:41:41
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