今週の『サザエさん』は一家で福島に旅行する話だったそうだけれど、具体的にはどんな内容だったのだろう? あいにく私はいま異邦人として暮らしているので日本のテレビを見られない。しかし福島第一原発の原子炉をつくった東芝がスポンサーであるだけに気になる。
原作者である長谷川町子は、1957年8月15日にこの4コマを発表している。
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12日後、茨城県東海村の原子力研究所で原子炉が臨界点に達する。第5福竜丸の被爆から3年が経ち、それでもまだアメリカがビキニ環礁で水爆実験をつづけていた時代だ。このころ、核保有国が次々に核実験を行っていたせいで、大気中に含まれる放射性物質が増加していた。
このたった4コマは、そんな時代の縮図になっている。見ればわかるように、フネとサザエの不安をよそに、マスオはまったく脳天気にふるまっている。母親たちはとくに子どもたちの生命を案じてかいちはやく放射性物質による食品汚染の情報を集めているのだが、父親は自分の楽しみばかり気にかけて母親から指摘されるまで心配すらしていなかった。原作者がいかに社会そのものを鋭くとらえて戯画化したかがわかる。
彼女が生きていたらいまの時代にどんなことを思い、どんな家庭像を描いただろう。もしも『サザエさん』が、原作者のすでに亡きことをいいことに、社会風刺ではなく逆に何らかの広告宣伝のために使われるのだとしたら、これほど皮肉なことはない。