私は自民党の改憲案に反対する。
自民党は、近年、基本的人権にかなり制限を加える必要があると繰り返しいってきており、そのために憲法改正を目指している。
しかし自民党の主張は、憲法の本来の機能を考えれば、完全に本末転倒だ。
そもそも憲法は、人間の基本的人権を保障すると同時に、それをいともたやすく損ないうるくらいに強大な力を持つ国家の行いを束縛する働きを持っている。
それは憲法97条と98条からわかる。
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
私たちは、国民として国家から権利と義務を与えられる前にそれぞれひとりの人間であって、他のあらゆる人間と同じように基本的人権を持っている。
国家は私たち国民によって認められているシステムだ。仮にそのシステムが憲法に背いて私たちの基本的人権を損なおうとしているとき、私たちは憲法に基づいてそのシステムに対してNOと言える。
憲法は以上のことを私たちに対して保障しているのだ。
もしも、憲法がシステムにNOと言うことを私たちに認めないなら、いつでも国家は私たちが人間として生きるための諸権利をたやすく損なえることになる。すなわち、人間性、言い換えれば人道が危機に陥るということだ。
自民党の改憲案は、人間性、人道に対する挑戦だ。
人文学(the Humanities)は、まさに人間性の探求にたずさわる学問として、いまこの危機に対して適切に応答しなければならない。
詩は、人間の内部に秘められた認識力と想像力の限界を追求する芸術として、いまこの危機に向き合わなければならない。
私はひとりの人文学徒として、ひとりの詩人として、またその前にひとりの人間として、この挑戦に対し強く抵抗する。