稀有な月曜日/あたたかいもの
ただのみきや

陽射しは澄んだ冷気を纏い
静かに微笑んでいた
病床から起き上がる母親のように

すると蒼白い時と仄暗い人の群れで編まれるはずの朝が
心なしか ふと暖色に染まり
視線は飛翔してはまた憩う 小鳥となって

稀有な月曜だ
ずっと本棚の裏に落ちていた
懐かしいページが開かれるように


あたたかいものだ 人とは

誰もかれもが着膨れて
幾重にもからだを包み
そのからだがいのちを包み
いのちは呼吸する
それは白い湯気となり
融けては消えて
ほんの少し
世界を温める

あたたかいものだ いのちとは

いのちはいのちから生まれ
生まれた赤子は湯気を立て
泣くのです
声を張り上げ泣くのです
いのちの限り泣くのです

いのちを無くした人間は冷たく固く
静かです
石のように静かです

夏にはいのちが咽かえるほどに満ちて
みんな裸になりたがる あの頃みたいに
いのちに浸されていたいから
冬にはいのちの大切さが身に沁みて
しっかり抱きしめたくなるもので
大事に覆って歩きます

あたたかいものだ 人とは

皮膚に刺さるような冷気を渡り
大勢の人々が今日も行きます
あたたかいいのちをしっかり包み
それぞれの場所へ行くのです

時代が変えることはできません
みんなあたたまりたいのです
誰もが求めているのです
ほら あちらでもこちらでも
白い吐息が呼んでます


自由詩 稀有な月曜日/あたたかいもの Copyright ただのみきや 2013-01-09 20:11:33
notebook Home 戻る