屍体は睨む
HAL
大義という主張と主張の狭間で
武器を持たないこどもがその親が
何の躊躇もなく銃弾で殺されていく
そしてその真実を世界に伝えようとする
ジャーナリストも標的にされる
その惨状をソファに座りTVを観ながら
ぼくは嫌悪を憶えながらビールを飲む
理不尽とも不条理とも愚行だと
戦争を語ることは余りに容易い
そう 安全地帯で平和を叫ぶ言葉は
ぼくのもっとも嫌う偽善そのものだ
戦争であろうと内戦であろうと
ぼくが偽善者であることは
そこで放たれる銃弾に撃たれ死ぬいのちが
はっきりとぼくを指差しぼくの正体を暴きだす
お前は卑怯だと卑劣だと死を愛する愚者だと
俺等をハイエナの如く貪って満足するなと
もう屍体の動かない眼はぼくを睨みつける
なぜだれにも話さず隠してきたかは知らないけれど
いつなにかで死ぬかも知れない戦火のサイゴンへと
護ってはくれないプレス・カードだけで訪れたとき
いくら公開処刑とはいえ初めてひとがひとを殺すのを視た後に
ずっと吐きつづけたお前はそれでも戦争とは何かを視るために
いのちを賭けて前線に向おうとした無謀なお前はどこにいった
あの熱いこころを以て俺等が戦う戦場に来て言葉を紡げと
だがその問いにいまぼくは沈黙するだけで返す言葉がない