もう映画は始まらない
HAL

スポーツライターのジェシカ・ガーヴィ
彼女の名を聴いてそれがだれかを分かるひとは少ない

もし彼女の名前を憶えているとしたら
新聞記者かアメリカ銃乱射に余程の興味があるひとだ

2012年7月16日彼女はカナダのトロントの
ショッピング・モールに恋人といた

でも彼女は嫌な予感がするとの理由で
恋人と一緒にそこを後にした

そしてその3分後に銃乱射事件が起こる
2人が凶弾に倒れ16人の負傷者がでた

その日の彼女のブログにはこう綴られている
「人生がいかに壊れやすいものかを見せつけられた。
 いつ、どこで、人生が終わるのかは分からない。
 家族との抱擁や友人との談笑、そして孤独な時間さえも恩恵なのだ」と

そしてその約1ヵ月後に起こった米西部のコロラド州のデンバーの
映画館で銃乱射事件が起こり彼女はこの世を去る

ミス・ガーウィの最後のメッセージはツイッターに投稿した
「映画はあと20分経たないと始まらない」

しかし映画は20分後には始まらず彼女は
バットマンの映画を観ることはできなかった

神は一旦安堵させて幸福を与えその後に平然と容赦なく奪う
あたかもひとのいのちには重さなどないと言うように

ミス・ジェシカ・ガーヴィ 享年24歳 夭折だ
長い未来が約束されていて当然の歳のはずだとぼくは想う

そしてまた現地時間12月14日に
コネティカット州のサンディフック小学校で銃乱射事件が起こる

亡くなったのはこども20人と教師ら6人
なんの罪も撃たれる理由もないひとたちだ

でも大統領選にロマニーを下し勝利したオバマも
声明を泣きながら『胸が張り裂けそうだ』と発表したが

全米ライフル協会(NRA)と説き伏せて
アメリカ合衆国憲法修正第二条で保障されている『武装の権利』も

コネティカット州も州の憲法で自衛または防衛のために
保障されている『銃を持つ権利』を破棄できないだろう

そうアメリカ合衆国とは如何に多くの犠牲者がでても
そこにいたものが運が悪かっただけと平然と考える国家に過ぎない


自由詩 もう映画は始まらない Copyright HAL 2012-12-17 18:46:58
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