かたつむりのつむりくんとなめくじのなめちゃん
ドクダミ五十号

ある温暖な朝の事

一本のひかる跡がありました

ナメクジの生きるに必然の

粘液の跡です

「気持ち悪」とか言わないでね

よくみれば綺麗におひさまのくれる光を反射していますよ

おっと

失礼致しました

それは「なめちゃん」が

「つむりくん」おうちに向かうあとだったのです

薔薇の鋭利な刺を越えた先にお家があります

「こんにちはつむりさん」

「やあ!よくきてくれたねなめちゃん」

片方のおめめで迎えるのはちょっと失礼かな?とつむりくんは
伸ばせるだけおめめの支えを伸ばして言いました

「いつみてもあなたはとてもやわらかでかわいい」

「あら、わたくしはやわらかぎるのをこわくおもっていますのよ」

ちょっと左目を引っ込めて言うなめちゃんでした

「これはしつれいいたしました どうぞこちらへ」

裾をちょいと振るうと言う器用さを見せるつむくりくんでありました

「ではおそばに」

おずおずとなめちゃんが

「あたしね、じつはあなたがうらやましくて・・」

「それをのろうために、きょうはきたよの」

つむりくんには青天の霹靂。

「いや、のろわないでくれたまえ」

「せんじつも、どうしが、おそろしいてきに、くわれた」

「のこったのはふかんぜんないえだけで・・」

両目を半分ほど縮めてつむりくんは言うのだった。

「あら、そうじゃないのよ」

「つねにみかんせいなおうちがあるのをうらやんでいるんじゃないわ」

「にんげんっていうりふじんないきものがいて」

「わたくしよりあなたををよきものとするについてですわ」

殆ど肉体に収容された眼球の様をつむりくんは「なぜぼくに」
と思いながらも、聞かねばと思い、しっかりと見詰め直すのでした。

「すてきなおうちこそがごじまんでしょ?」

「けれどもあたしのごせんぞだってもっていたのだわ」

それはつむりくんも当然に知っているのでした。なにせ、学校で習いますから。

「ぼくはこれを」

つむりくんはおめめをのばしてじぶんのおうちをつつきました。

「めんどうだなあっておもうことがあるよ」

「なにせあのよにまではしょっていけないからね」

なめちゃんは納得しはしませんが、同情はするのでした。

「それぞれにこうへいになやみがあたえられるのね」

その後、ふた筋の光る跡が交差して、薔薇の茂みに跡を残した事を、目撃した
人間の言う事には「これぞ芸術である!而も無為な」
以来、その茂みは手入れを逃れ、残った貝殻は丁重に飾られる事に。
勿論、なめくじは、その庭では駆除をされず。今日も美しい自己保存の跡を、庭の
そこかしこに残すのだった。



自由詩 かたつむりのつむりくんとなめくじのなめちゃん Copyright ドクダミ五十号 2012-12-10 19:34:45
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