個と場
あおば

            121116



 出生率が下がってるから、若者の人手不足といわれていても
若者にも厳しい職場しかないのです とため息をつかれた
わりかし給与が好くて働きがいのありそうなところには、求職者が大勢集まってなかなか採用してもらえません
そしてそんなところだって頑健な人以外は生き残れない厳しい職場環境だから、ぼんやりと休日を過ごす余裕もなくて、
疲労が溜まって行き、やがて燃え尽き寸前になっていく
そんな、厳しいところは、ひ弱な人を排除しているかのようで、その実、君は厳しい労働に耐えられないから正規雇用は無理だけど、短期ならば、臨時ならば、非正規雇用ならばもっと楽な職種で採用できますよと、安く雇ってその実過労死寸前の状態に追い込んで酷使して使い捨てる
 そんな厳しい選別が雇用状態が差別が徴兵検査が無くなっても、これからもずっと続くんだろうなと、昔のタコ部屋を想像する
今も全国的にタコ部屋状態が瀰漫していているようで、弱いもの虐めの勧めが教科書にも刷り込まれ、虚弱なものは、病人は、頑張って健康になろうとしなかったから、心がけが悪かったのだから、親の育て方が悪かったのだから、自業自得ですよと、侮蔑な眼を向けられて、生きているだけだって贅沢だといわれそう、というよりも言われて居るんでありますが・・

 深夜、町はずれのフロントで8人部屋なら空いてますと言われ、これはえらいことなった、一泊いくらになるのだろう、懐が空になるのが目に見えたが、もうへとへとで他所を廻る気力もありません 8人部屋で好いから泊めてくださいと頭を下げた 通された部屋は2段ベットが4組で8人が寝られるようになっていた 部屋の面積は普通の2人部屋並で・・、 料金は、駅前だったら、少し贅沢な1名部屋程度であったのでほっとした やっぱしひとり旅は割高だなと思いながらも8人分の睡眠を取らなきゃと深く考えることなく眠ることにした
 この狭い8人部屋に大人8人が眠るとしたら、修学旅行のような呑気な気分になれるのだろうか、いや、そんなことないよね 上役同役下役とそれぞれが気を使い、いち早く眠るのが勝ちだと、鼾のレースも始まって、神経質な誰かが負けて、眠り損ねたりして、ここでも厳しいことになりそうだ






初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
                http://anapai.com/tanpatsu/goru/
初出稿を修正。 タイトルは、こひもともひこさん。






自由詩 個と場 Copyright あおば 2012-11-16 23:17:31
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