まぜるな危険
あおば

                121106



異性の漂白剤、混ぜるなと言われると混ぜたくなり
危険といわれると益々やってみたくなり
マグロ一本釣り漁船に乗って遙々アメリカに出かけたところ大統領選挙を間近に控え
オバマ候補とロムニー候補の一騎打ちが本日にも行われると言うことで
国中が熱気に包まれてうっかりして本心を漏らすと四面楚歌の反駁を喰らう恐れもあり
口をつぐんで緊張しながら友達の家へ行ったところ
劣勢の焦りを感じたのか巻き返しを狙っているロムニー候補が最後のテレビ演説をしていて
共和党支持に回った友達の家族はうっとりとした表情で聞き入っている
彼の家は貧しくて、健康保険にも加入できなかったのが最近やっとオバマ候補の政策で加入できたばかりだというのにおかしなことと思ったら
現在失業してしまったので、それはオバマ候補が頑張らないからだと考えているようで
民主党から共和党へ、オバマ候補からロムニー候補に支持を変えてしまったようである。
いっそのこと、
二人の候補が正副の大統領になって双方の支持者を味方にして共通する政策を実行すればずいぶん議事進行の効率がよいのではないかと思うのだ。民主党の大統領候補に選出されるまでは敵味方で激しく争ったオバマ大統領とクリントン国務長官も結構上手く行っていたのではないかと思うので、それならば主義の異なる政党同士が正副で協議一致させればもっともっと効率が上がり上手く行くのになぁと思いながら重たいブラウン管テレビを背中に担ぎ論争を写しながら街中歩いて行く。疲れる話だけれどこの程度の苦労を買って出ない限りこの世はちっとも進歩しないのだ。そう思うのだ。スマートフォンのような軽いディスプレイでなく、落とせば爆発してしまう厚い脆い鉛硝子で出来ているブラウン管式だからこそ緊張しながら眺める人にもその重さと危うさが実感できて単なる洒落から重たい現実の風景となり危険性に膨らんで見えるものだ。異種のものを混ぜるな危険といわれても混ぜるのを遠慮しているようではいつまで経ってもらちがあきません。この際一気にかき混ぜたら如何でしょう、もしかしたら一瀉千里で目的達成となるかも知れません。そうなればあなたも一角の人物として、候補者に祭り上げられること請け合いです。遙々波頭を越えてアメリカにやってきた甲斐もあると思います。そんなことを自問自答すること30年、自分の感情と客観的な可能性を秤に掛けたところ巧い具合にバランスしたので、この次は量を増やして商業化してみようかと考えて、うらんかなの売り声にかわんかなと答えて悦に入っているうちにストロークな夜が明けた。





初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
                http://anapai.com/tanpatsu/goru/
初出稿を僅か修正。






自由詩 まぜるな危険 Copyright あおば 2012-11-06 22:03:56
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