うどん
あおば

                121102


本番までに修正するので
ばんばん注文してくださいねと
軽やかな笑顔で湯がいているので
1対0で破れた口惜しさは分からない
若い頃は新人歌手オーディションにも落ちたこともあったのだから
どんなときでも本番であがることはありませんと
溶いたばかりのお汁の味をみている
昨日は英語が聴き取れなかったから
あんまりよく分からなかったけど
新技術搭載の軽四輪車に試乗したのだと
昨日のことに話を振るから
かけうどんはまだですかと催促すると
この子はアイドルデビューしたばかりですから
新人ですから
よろしくご声援をお願いしますと頭を下げる
そんなことよりも
うどんが早く食べたいのにと情けなくなって
おもわず下唇を噛む
最近は街角からゴミ入れが撤去され
ポケットの中は膨らむばかりだと
独り言を言いながら
冷めても美味しい冷や奴を頼めば良かったと思っている
ここのご亭主とも長い付き合いだけど・・、
玩具の機関車みたいにいざというときには頼りになりそうもないなと
チャンネルを変え
台所の隙間収納庫から片栗粉を取りだして飲みかけのミルクで溶いてからカップラーメンにかけてチンしたよ
この次の御神輿の機嫌は如何でかのスピーカーの明るい声が3次元空間になり損ねたうどん玉の転がる音を遮蔽するから、厳しい季節の前だからとワイングラスにも飲み残しを注ぎ足したからカラスの啼かない日々には新発売の軽四輪車に乗りこんでゴミ箱を買いに行かなければなりませんねと熱々の失敗続きのオーディションを繰り返す騒がしいイラスト混じりのカップラーメンをかき混ぜた





自由詩 うどん Copyright あおば 2012-11-02 13:44:17
notebook Home 戻る  過去 未来