詩人不在証明その3
rabbitfighter

不在を証明せよ、
と、
書きなぐられた、
黒板が、反響する、チャイム、
放課後の静けさ、誰もいない、教室の大気、
歪な、掃除要具入れの、造形美、
フローリングの線に沿って、並んだ机達が、
太陽を中心にして、放射状に、広がろうとしている。

トロイメライのメロディーに乗って崩壊していく子供たちの情景が、
足元から伸びていく影をいつまでも追いかけていく、
横殴りの、
西日を、
背中に、
浴びて、
証明しろ、お前の、不在を、お前の、空白を、

光速で、移動する、ということ、質量を、待たない、ということ、空間を、占有しない、ということ、留まっては、いられないから、留まっては、いられない。


もしも、思考が、光速を、超えたら、未来が、見える、かな。

だけど、

いつまでも愚鈍な我々の思考は存在を在り続けることを願うばかりで吐き出されたお前の詩情は宇宙の膨張から取残され見捨てられたお前の命そのもので永遠は限りあるもの喜びや悲しみは我々のもの光は留まっていられないから決して振り返ることは出来ない一つの思考が一つの方向に光速よりもほんの少しだけ遅い速度で宇宙の果てを目指しなおも広がり続ける宇宙の深遠よ光によって証明されたことのない宇宙の外苑よ空間を占有する最小単位の思考が燃やされ続ける全ての恒星から放たれる光の速度を超えて光の速度を超えて光の速度を超えてあらゆる方向に向かって知覚することの出来ない未来の瞬間を存在を在り続けることを、

お前の、不在を、在り続けることを

不在を、証明せよ、と、書き殴られた、黒板、それが、お前の、欠席の、理由、
光に、埋め尽くされた、教室の、容積、フローリングに、落ちる、血や肉の、影、
留まっていることはできないと言って、お前は、走る、不意に落下した黒板消しが、チョークの粉を、舞上げて、それから、ゆっくりと、沈殿して、そのとき、そこに、お前はもう居ない。


自由詩 詩人不在証明その3 Copyright rabbitfighter 2012-10-05 02:04:35
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