わたしもまた一枚の皮張り
そらの珊瑚

おそらく
それが見ず知らずの善良な動物の皮であった
という
ひどく生々しい事実にもたれながら
わたしが
しらずしらずのうちに
この足で踏みつけてきた
ものを想います

どうして
こんなにも優しいのですか?

それは
ぼくに与えられた
最後のステージだからです
おしまい
というものが
優しくなくては
かなしすぎるではありませんか

おしまいのキャラメル
おしまいの握手
おしまいの笑顔
おしまいの……
覚えていますとも!
寄りかかるには
もうそれらは既に心もとないのですが
わたしにはあなたがいます
お気に入りの皮張りのソファがいます
適度なクッションで肺呼吸
秘められたスプリングは心臓
あなたは
八年を経て
いくぶん濡れた砂色に変色しながら
わたしを寝そべらせています

靴は置いてきました
ここに
とどまるために置いてきました

夏にはひんやりと
冬にはほのあたたかく
ああ まぎれもなく
息をしています

あなたはまだ
生きているのですね
おしまい 
という運命の中で


自由詩 わたしもまた一枚の皮張り Copyright そらの珊瑚 2012-09-21 08:20:54
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