最後の約束
乙ノ羽 凛

君がぬいぐるみが好きって言うから
僕はたくさんのぬいぐるみをプレゼントした

どうしても欲しいって言ってたぬいぐるみを
プレゼントしたくて探し回った

何処にもなくてとぼとぼと歩いていたとき
奇跡的にゲームセンターのクレーンゲームで見つけた

アームが弱くても取れないってわかっていても
粘って100円玉を何回も何回もつぎ込んだ

結局それを見かねた店員さんが
取れやすい位置にしてくれた

そして君にプレゼントした
君は無邪気な笑顔で喜んでくれた

大切に大切にしてくれて
寝る時もそのぬいぐるみを離さなかったね

ぬいぐるみだらけの部屋で
今、僕は一人 居ない隣に君が

大切にしていたぬいぐるみは少し
悲しげな表情をしているように見えた

鏡に映った自分はどうしようもないくらい
情けない顔をしていた

「そのぬいぐるみを大切にしてあげてね」

最後に君と約束したことを守るよ
ぬいぐるみを抱きかかえ肩を震わせ

余命より少し長く生きた君の写真に
笑顔を向けた


自由詩 最後の約束 Copyright 乙ノ羽 凛 2012-08-02 14:57:03
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