少年少女ロマンス
乙ノ羽 凛


空中庭園で一人たたずむ少年
目の前には真っ赤な薔薇

棘に触れ続ける少年
その指先は傷だらけ

薔薇に変わってしまった少女を
思い出しながら微笑みかける

痛みに触れることで喜びと
悲しみの連鎖を繰り返す

少女は凛と咲き誇る
少年は優しく包み込む

しがらみから解放された
二人だけの空中庭園

棘は少女の心の痛み
はり巡る棘にそっと触れ続ける

棘の数だけ少年の手も傷つく
二人だけの世界

邪魔なものは一つもない
空中庭園という名の閉鎖的空間

少年は少女の最後の痛みに触れた後
根本から薔薇を優しく包み

空中庭園を飛び出した
二人で真っ逆さまに落ちる

腕の中で少女は体を取り戻し
少年の傷だらけの手を握りしめた

少女の感謝の涙は少年の傷に触れた
その瞬間二人は現実に戻る

美しい少女と優しい少年は
手を取り歩き続けるこの先何があっても


自由詩 少年少女ロマンス Copyright 乙ノ羽 凛 2012-08-01 21:33:33
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