[:door
プテラノドン

ドアノブ

座間キャンプ、ベンチに座っている。
手続きは済んでアルコールでもあおりたいくらいだ。
アメリカに来た気分。でもそんな恰好で働いている
友人たちを考えているとどこでも一緒なのかもしれない。
そしてoutlaw。米兵たちは軍服を着た日本人に目もくれない。
時に立ち止まって挨拶するのはスズメだけ―、
Fは茨城の駐屯地で教わった方言で
ジャパニーズチュンチュンメ、ジャパニーズチュンチュンメ、
と右手で何羽も撃ち殺す。

慰安旅行でグアムに行ったUは、夜中に後輩を連れて
街へ出た。そして裏通りでレンチを手にした男にからまれた。
「ヘイ!サムライ!」
思い出すのはコンビニの駐車場で脇腹に
突きつけられたナイフ、もしくは土手で投げつけられたレンガ、
駅のホームで待ち受けていたのはチェーンソーを持った男、
それでも家に火をつけられた奴に比べればまだましだった。
中華料理屋でからまれた時には、バーナーを浴びせようとする
在日もいた、どれも今となっては懐かしい。
でも余韻に浸っている暇はない。弾丸より速く
走れやしないことくらい馬鹿だってわかる。
Uたちを助けたのはバーの玄関で立ち話をしていた
コールガールかなんかの日本人の女。
彼女は諭すように言った。「こっちに来たら、駄目だよ」
Uは笑って女の胸を鷲掴みにしてこう言った。
「ハウマッチ?」

「金ならいくらでもあるわ」
Cはスナックの女に話しかける。アルミか真鍮、
そこらへんで銅線をひっぱってきたっていい。
ついこの前も式場を壊す仕事をこなしながら、拾い集めた
ドアノブを売り払うと8万になった。こんな風に金が
手に入るのならば、夜中に電話で叩き起こされるのだって文句はない。
その大半を使って、4人は飲み歩いているだから。

三件目のスナックの店先で、
Kはそのドアノブの値打ちをCに聞いた。
「こんなもん、幾らもしねーよ」こんな時は、
詩がよくよく頭に浮かぶ。すらすらと文字が
無傷のまま言葉が、壁に打ちつけられた
小便の勢いとともに。




自由詩 [:door Copyright プテラノドン 2012-07-18 23:15:57
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