反吐と外皮
salco

たんすの中で服達が
牛や熊みたいに押し合っている
それぞれに獣毛をマネた人型の
ウールや化繊の上着達
ラム革合革
色とりどりの
似合いもしないスカート達
無用に増えるコート達
毎年足りないパンツ達
冬の間私の毛布であった、
どれも貧しく薄汚れているそれ達を
嵩と重さにヘキエキしながら順繰りと
およそのところで洗い終えた頃
儚い花々の散り失せて
空は優等生の青をそびやかし
僕には臆すべき弱点など一つも無いよという風に
実にシャッキリカンと仁王立ち
私に先立ち風達は
水しぶきのなりをして身体を通り抜けざま
海へおいでよ早く!
とからかい半分言い置いて行く
太陽は早くもとんがった爪で
私のふやけた薄皮をひりひり剥がしにかかるようだ
脳天気な新緑は光の寿唄を歌い
雄々しい季節が育ち行く
やがて夜さえおずおずと踊り出し
女王の威厳を取り戻した月がしぶしぶ寝床に帰るまで
狂気の沙汰へと私を誘う
部屋にじっとしていれば
浅い胸の谷間がじっとり汗ばんで
夏の姿を夢に感じつつ
彼と少しは上手に踊る為
私の体はわずかに再び痩せ始め
貯え込んだ冬眠の脂肪を燃やす
その頃には
たんすも少しく体重を減らし
麻や綿の服達がシワを寄せてギッシリと
だらしない様で垂れ下がっている
秋からは再た信じられぬ程の
馬鹿げた色合いと恥知らずな形をして


自由詩 反吐と外皮 Copyright salco 2012-05-02 00:07:20
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