Jes
mizunomadoka

母は肉体と魂が徐々に離れていくものだと言った
こうして話をしているときにも
食事をしているあいだにも
離れていくのだと

だから私たち姉妹は
祈りはそれを遅らせるものだと思っていた
不思議と
防げるものだとは思っていなかった

母は私たちに祈ることを強制しなかったけれど
母が祈っている姿を見つけると
私たちも膝をついて祈った

母がいつまでも元気でいますように
3人がいつまでも一緒にいられますように

ある朝母が、実ってないトマトの子供を
祈り摘んでいる姿を見て
離れたがっているのだと理解した
魂だけになりたいのだと

妹に梯子を支えさせて
私は隣の家の柿を盗んだ
見つかって叱られたとき
どうしても妹が欲しがったからと罪を着せた
妹は意味も分からずに泣いていた

妹のことを想うと
今でも胸が締めつけられ
息ができなくなる
そばにいてほしい

私は祈るのをやめ
目を閉じる時間が多くなった
魂ではなく、あなたに会いたかった

梯子を支えさせるために名前を呼んだとき
妹は嬉しそうに駈けてきて
まぶしそうに私を見上げ
にっこりと頬笑んだ








自由詩 Jes Copyright mizunomadoka 2012-04-21 11:20:25
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